RAMS[34] IECとEN
日本ISA認証に関する現時点での整理
「日本でEN認証機関を作ることができるか?」に関する現時点での整理
日本でのEN認証機関の可能性について、現時点で整理してみました。
詳細な検討内容は下記に記しますが、結論から言うと 日本のNITEやJABがENの認定機関になることは現状では不可能 です。理由は、EN規格がERA(欧州鉄道庁)の下で管理されており、EU非加盟国である日本はERAの承認を得ることができないためです。そのため、NITEやJABをEN認定機関として、日本に認証機関を作ることは不可能です。
少し例外となるケース
ただし、若干の例外は存在します。ひとつは英国です。英国はEU離脱後、ERAの認定は受けていませんが、UKASは依然としてENの認定機関として世界的に一定の信頼を維持しています。正確にはERAからの認定は受けていないものの、UKASのブランド力により、顧客はUKAS認定を実質的にEN相当とみなすケースが多いのが現状です。
さらに特筆すべきはオーストラリアです。オーストラリアにはUKASから認められた認証機関が存在します。これは英国がEU加盟時代から続く経緯によるものであり、英国との歴史的・制度的なつながりの深さが背景にあります。鉄道分野でも欧州方式の認証体系をそのまま採用してきたことから、オーストラリアは特別な位置付けとなっています。
今回調査の中でわかったこと
今回調べていてわかったのが、TÜV SÜD JAPANは日本国内で独自にEN認証を行う資格は持っていない という点です。厳密には「持っていない」というよりも、本社(SÜDドイツ本社)が日本法人に認証権限を与えていない、という表現が正確かもしれません。したがって、SÜDに認証を依頼すると、最終的にはドイツ本国でのアセスメントとなります。
一方、RINAやRhinelandは比較的柔軟で、日本以外の国でも認証業務を行う権限を支社に付与しており、中国・韓国などではローカルアセッサーによる認証が可能になっています。これは今回調べる中で得られた副次的な発見でした。
最後に
日本でENの正式な認証機関を立ち上げることが可能なのか、という観点から今回整理した内容をメモ的にまとめておきます。あくまで私が現時点で調査・整理した範囲と私見も含まれており、必ずしもすべてが正確・網羅的とは限らないことをご了承ください。
① 技術論の前提
- IEC 62278(日本でのJIS E 60726)とEN 50126は技術的にほぼ同一。
- 日本ISAは既にIEC版RAMS評価を実施可能な技術水準にある。
- 問題は**制度的な「誰が認証権限を持つか」**という話に集中している。
② 制度論の壁
制度 | 内容 |
---|---|
ERA(欧州鉄道庁) | EU法制度に基づくISA登録制度の支配者。日本機関は登録不可。 |
NB制度 | EU域内国家がNBを認定。日本機関はNB認定も不可。 |
JAB / NITE | ISO適合性評価認定(17020、17065など)は可能。ただしERA/NB制度には無関係。 |
UKAS | ISO/IEC適合性評価認定機関としては今でも国際認定有効。ただしERA制度には無効。 |
③ くぐり抜ける可能性のあるルート整理
ルート | 実現可能性 |
---|---|
欧州ISAとのビジネス提携型モデル | ◎ 最も現実的・合法・技術移転も可能 |
ISO適合性評価(UKAS等)取得強化 | ○ 国際証明力UP。ただしERA制度には直結しない |
欧州ISAからのサブコントラクタ提携 | ○ 日本ISAが技術下請けで実務に参画 |
合弁・共同新法人ISAモデル | △ 難易度高いが国家戦略としては検討可能 |
日本独自ERA登録 | ✖ 制度上は現時点では不可能(政治交渉レベル) |
④ 欧州ISAの提携候補整理
機関 | コメント |
---|---|
TÜV Rheinland Japan | 現実的に最も整備済み・提携実績多数 |
Ricardo Japan | 鉄道ISA色が非常に強く、日欧協力に向く |
DNV Japan | 実績豊富・柔軟な国際提携体質あり |
SGS Japan | ISO系中心だが交渉次第でISA提携余地あり |
SUD Japan | 技術基盤はあるが、ISA分野での日本実績はまだ薄め |
⑤ 長期的制度設計の国家戦略の可能性
国際鉄道プロジェクトにおける日本ISAの地位強化
日本政府とEUとの間で制度協定を結ぶ可能性(現状ゼロベース)
日本国内ISA人材育成プログラムの整備
日欧共同ISA育成モデルの構築