鉄道とサイバーセキュリティー [3] 海外での鉄道OTセキュリティ:全体の傾向
市場の成長とデジタル化の進展
- 鉄道サイバーセキュリティ市場は急成長しており、2024年の約75億ドルから2030年には120億ドルに成長する見通し。長期では2034年に向けて287億ドル規模まで拡大する可能性もあります。年成長率(CAGR)は約8.7〜10.5%と非常に高いです。railroads.dot.gov+1MDPI+1
- この成長の背景には、鉄道のスマート化やIoTの普及、AIによる異常検知技術の進歩、そして政府によるセキュリティ規制の強化があります。GlobeNewswireヤフーファイナンスstrategicmarketresearch.com
OT領域への注目と対応強化
- OTネットワーク、特に列車制御や信号系統に対する脅威への警戒が高まっています。専門的なIDSや侵入検知技術の導入が進んでいます。スコティッシュサン+2strategicmarketresearch.com+2wiseguyreports.com+2
- 欧州ではENISAやEurail Agencyなどがセキュリティ対策を統括し、規格整備や業界ガイドラインの策定を進めています。railway-cybersecurity.com
- 多くの組織がセキュリティの評価・設計段階から「Security by Design」のアプローチを組み込むことを重視しています。
地域ごとの動向の違い
地域 | 特徴 |
---|---|
APAC | 市場シェアが最大。中国、インド、日本などで鉄道の近代化が進むグランドビューリサーチグローバル成長インサイト |
欧州 | 規制主導で高い安全基準。ETCSなどのクロスボーダー対応も進行中グランドビューリサーチcybersenate.com |
北米 | PTC導入を背景にOTセキュリティ対策が進展グランドビューリサーチrailroads.dot.gov |
南米・中東ほか | 徐々に認識が高まり、投資が拡大中wiseguyreports.comtheinsightpartners.com |
特性 | 無線制御型(CBTC, PTC, ETCSなど) | レガシー型(閉域有線制御) |
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通信方法 | 無線通信(リアルタイム性重視) | 有線・閉域(定期通信が中心) |
影響範囲 | 列車制御に直接影響可能 | 運行管理など間接的リスク中心 |
攻撃手段 | ジャミング、なりすまし、妨害など | USBや保守端末経由の侵入など徐々に波及 |
海外の注目 | 高度な暗号化・認証・IDS/IPSによるリアルタイム監視が規制化・標準化の方向 | 資産の可視化、セグメント分離、侵入兆候のログ分析などが防御の主軸に |
海外ではまず、鉄道サイバーセキュリティ市場全体が急速に成長しており、OT領域を含むインフラ全体への投資が進んでいます。特にEUや北米では規制・標準化の整備が進み、機器設計段階からセキュリティを組み込む流れが強まっています。
小型車両や都市鉄道に採用されるCBTC/PTC/ETCSといった無線制御型システムでは、リアルタイムの列車制御に関わる通信そのものが攻撃対象となるため、暗号化、IDS/IPSなど高度な対策が不可欠とされています。一方、従来型の閉域有線制御システムでは、直接的な制御への影響は少ないものの、運行管理への波及リスクがあるとされ、資産管理や可視化・セグメント分離などを中心とした防御策が主流です。