CBTC[8]  在線検知装置

鉄道信号にとって在線検知というのは要です。在線検知とは列車がある場所に在線しているか、居ないかを判断することです。従来の鉄道は固定閉塞という仕組みを取っていて、ある閉塞(区間)には一つの列車しか入れないという大前提をもって列車の衝突を回避しています。在線検知装置には日本では軌道回路が一般的です。

軌道回路による在線検知は地上設備で検出するので、地上位置検知方式 と言われます。CBTCは列車の位置を地上子とそこからの移動距離で検出するので車上位置検知方式に分類されます。GPSによる位置検知も車上位置検知ですね。それぞれ、利点・欠点がありますが、地上位置検知は閉塞単位での位置検知しかできないのに比べ、車上位置検知は閉塞にとらわれないので細かい位置を計測することができます。これによって移動閉塞制御ができることになります。その点、地上位置検知は車上に搭載される設備に依存せずに、列車の車輪(車輪短絡)を検知して、列車の有無を判断するので、一般的には地上に列車位置検知装置を設置すればどんな車両による在線も判断することができます。車上位置検知方式は車上に高度な車上位置検知装置を設置する必要があるので、コスト的には車両台数に依存しますし、非搭載車両は位置が全く分からないということになります。所謂、幽霊列車になってしまうという事です。CBTCのような車上位置検知方式の場合、すべての列車の位置を把握しておく必要があるため、幽霊列車の発生は致命的なので、本線上に走行する列車はすべて車上位置検知機能を持った車上装置を設備する必要があります。

よく、CBTCが優れているのでシステム更新をしたいと相談されますが、車上位置検知方式は路線の向き不向きがあるので、使用する路線の状況をよく検討して判断したほうがいいと思います。基本的にはお金がかかると思って間違いありません。それでも、CBTCの利点を得たいという路線であればCBTCを検討することもありかと思います。

列車の在線検知には軌道回路がよく用いられると書きましたが、現在CBTCを導入しようとしている東京メトロ東西線とと公共都交通局の大江戸線は軌道回路から車軸検知方式に変えると聞いています。本来、車上位置検知も列車位置検知ですので、同じ機能の軌道回路や車軸検知を導入する必要はありません。しかし、事業者によってはCBTCが機能しないときに代替信号のために、地上位置検知方式を持ちたいという事業者も多々います。また、鉄鎖区間はより正確に列車位置を把握したいという希望で鉄鎖区間だけ、軌道回路や車軸検知による列車位置検知を行いたいという希望もあります。当然、システム的には冗長になるのでコスト増加になります。

東京メトロも東京都交通局も既にある軌道回路をそのまま使用すれば設備投資は抑えられると思いますが、なぜ、CBTCへの置き換えを期に車軸検知方式の列車在線検知にしたのかは不明です。

一般論ですが、軌道回路は車軸検知方式に比べて閉塞長の変更が難しい、軌道回路受信レベルのメンテナンスが難しい、非省エネ、車輪とレールの接触抵抗によっては非在線になってしまうなどの欠点があります。また、水没時には軌道回路は機能しなくなります。

逆に車軸検知子は車輪の入り通過ー出通過を数えているので、電源送出などによってすべての情報が消えた場合や、軌道に列車がわいてきた場合には列車が居るにもかかわらず、非在線になるという根本的な欠点があります。ただ、不揮発性のRAM、UPSなどコンピューターが発達した今、故障による非在線間違いは起こらないでしょう。まあ、ウルトラマンがこっそりと軌道上に列車を置けば列車が居るにもかかわらず、非在線としてしまうかもしれませんが、そこまで考慮する必要はないでしょうし。

世界では車軸検知子による在線検知も多く実績がありますし、軌道回路も短絡不良を起こせば非在線になるので、車軸検知子が軌道回路より劣っているということは現在ではないのかもしれません。それに加えて、起動回路は電圧を管理する必要があり、保守にはコストがかかりますが、車軸検知子は基本メンテナンスフリーです。

このようなことからも、日本では少しずつ軌道回路による在線検知方式から車軸による列車在線検知方式に移行していくのではないでしょうか。

メンテナンス要員やメンテナンスコストが重荷になっている地方鉄道こそ、車軸検知方式の列車在線検知に移行すべきだと私は思います。