CBTC[6] IEEE 1474 P1 ATO機能

IEEE 1474 P1には 6.2 ATO functions の章があります。以下に説明していこうと思いますが、その前に知っておくべきことがあります。世界には規格なるものがあり、代表的なものにはIECとIEEEがあります。それぞれの規格を総合的に管理しているところはなく、CBTCでいえば、IEC 62290 Urban guided transport management and command/control systems、通称 UGTMSと、IEC 62267 Automated urban guided transport 、通称 AUGTというものがあります。前者はフランスのパリ地下鉄が発起となって規格作成が始まりました。もうすでに20年近く作成にかかっている規格です。作成中にメンテナンス時期が来るなど、いつになったら完成するのやら。このUGTMSは Reporting Train を対象にしていますが、結局のところは Reporting TrainとはCBTCに他ありません。AUGTも対象はやはりCBTCも含まれます。AUGTの視点はどちらかというと、運用面にフォーカスが当たっているため、信号システムそのものに触れることはありませんが、間接的に影響する部分もあるので規格への対応が必要になります。

このように異なる規格でCBTCに対する要求があるという非常に面倒なことが起こっています。顧客の入札要件書には規格の羅列が書かれるだけで、これら規格の矛盾に対して書かれていないのは、明らかにコンサルタントの手抜きだと思います。そのうち、UGTMSやAUGTについても書いてみたいと思いますが、ここでは IEEE 1474 に書かれているATOとATS機能について書いていきます。

6.2 ATO functions の冒頭に、係員が乗車する場合と無人の場合の両方があることが書かれています。システムを作る時はGOA4を想定して作っていった方がいいでしょう。信号という面ではあまり変わりませんが、運用に大きな違いが出てきます。運用を想定しながらシステムを構築するのが良いと思います。当たり前ですが。

6.2.1 Automatic speed regulation

これは、ATP Profileの下で行う自動運転の要求です。日本ではATPパターンの下にサービスブレーキパターン、その下にATOパターンを作る場合が多いですが、海外ではATPパターンの下にサービス(ATO)パターンを持ってます。日本の場合はサービスブレーキはバイタルであるということになっていますが、一旦フルサービスブレーキがかかっても速度が緩解パターンに達するとまた力行をかけることができます。確かに、非常ブレーキがかかってしまうと、緩解手順が面倒だということは海外でもその通りなので、前のブログでも書きましたが、どのようなときにどんなブレーキをかけるかは顧客とよく合意を取った方がいいです。そう考えると、やみくもにに非常ブレーキをかかるのはどうなのかという議論になります。個人的には、速度超過と致命的故障の場合は非常ブレーキで、あとはサービスブレーキ(ATOブレーキ)でも良いのではと思っています。

ここでの要求は駅間を自動で列車を走らせる要求ですが、実際はもう少し高度な要求がされています。まず、ATSからの指令によっていろいろな走行ができる事、例えば天候によって走行を変える、また、運転乱れに対応するなどもあるでしょう。時に最近は省エネ運転と乗り心地の要求はまずあると思った方がいいです。かといって逐一運行係員が細かい指示をすることは無いでしょうから、これらも自動で選択するようにしておくべきです。

当然、CBTCの場合にはPSDが設置されますから、決められた停止位置に正確に止める必要があります。

6.2.2 Platform berthing control

通常は列車長とプラットホームの長さが一緒ですから、完全に列車がホーム入りきるように列車をプラットホームに侵入させます。当然、先行列車によるATPパターンの関係で進入出来ない場合もあります。列車長よりプラットホーム長が長い場合には、複数列車の進入を想定しましょう。列車長よりもプラットフォームが短い場合はプラットフォームに入った車両ドアだけを開けなければなりません。

CBTCは前後に余裕バッファを設けるため、どうしても先行列車に対して近づくことが難しいことがありますので、2編成を縦列駐車させるときは、入れるパターンが作成できるかよく検討する必要があります。また、駅の停車では jogging で定点停止まで動かしますが、後退 jogging を要求されるような場合には、後続列車の停止点を必ず先行列車が下がってこない位置にする必要があります。

6.2.3 Door control

ここでのドア制御は、あくまでも自動で開閉しなさいということで、当然、開けていけないときにはATP機能としてドアを開けてはいけません。鉄道事業者によって又はGOAによってドアを何処まで自動にするかは変わります。システムとしては自動で開閉機能を設けてそれぞれに禁止モードを付ければよいでしょう。プラットホームのない側のドアを開けることは危険なので、ATPで防護します。

6.3 ATS functions

この章の初めにCBTCの恩恵を受けるためにはATSを設備するのが良いと書かれています。CBTCの地上-車上間を大容量通信できるという大きな利点は、このATSの機能を使ってさらに便利になるということです。

6.3.2 ATS user interface

ATSのインタフェースはパート2に書かれています。

以下には今までの固定閉塞で行っていた機能は省きます。CBTCになることによって追加や注意が必要な項目のみここでは取り上げます。

6.3.3 CBTC train identification and train tracking

当たり前ですが、ATSには列車特定(ID)と列車の位置が表示されなくてはなりません。固定閉塞の場合は、ATSの画面は閉そく毎にブロック表示されていて、そのブロックが在線していれば、そのブロックを赤にしているATSが多いです。CBTCは移動閉そくなので、ブロックで表示することはできずに、列車アイコンを少しずつ動かして表示することになるでしょう。ただ、セカンダリの固定閉塞がある場合には、閉そく在線を示したのち、在線する列車の位置を表示するなどの表示の仕方もあります。ATS画面は顧客ともめる要素なので、良く合意を取りましょう。列車にはプロパティを表示するようにする必要もあります。列車の前後の位置と列車長も表示しろと規格には書いてあります。

6.3.4 Train routing

TBD